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オペラ 『ジプシー男爵』 Der Zigeunerbaron

2004年7月25日(土)14:00 開演 [滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール]

2年に一度、全国から出演者を募って開かれる『びわ湖の夏・オペラ ビエンナーレ』。
初回の今年の演目は、ヨハン・シュトラウス二世のオペラ『ジプシー男爵』。2日間の舞台から25日の公演を観た。

当日は、思い出したように小雨のぱらつく空模様。ホールに入ると、ビュッフェのガラス窓のむこうに、白く波頭の立つびわ湖が見える。けだるい夏のマチネー。カジュアルな服装をした人々は、ビュッフェでビールを飲んだり、軽く食事をしてから座席に向かう。
場内の明かりが落とされると、オーケストラピットがぼんやり浮かび上がる。静まりかえった場内に序曲が響き、幕が上がると荒涼とした荒地が広がる・・・。

物語は、古い財宝の伝説が残るこの荒れ果てた地に、かつての領主の息子、バリンカイが帰ったところから始まる。長い苦難の旅から帰ったバリンカイは、この地に住むジプシーの群れと豚飼いの王との間でほんろうされながら、ジプシーの娘と恋に落ち、やがて伝説の財宝を手にして幸せの頂点に達するように思われるのだが・・・。

シュトラウスの曲は、ウィンナワルツととハンガリー風音楽の対比が特徴的。
ウィンナワルツの、カシューナッツみたいに歯ざわりのいいリズムと甘い旋律。
ハンガリーの激しいリズムと情熱的な旋律。
二つの性格がときにむつまじく、ときに因縁のように絡み合う。

当時、オーストリアはハンガリー内部では強い反対の声も上がっていたにもかかわらず、オーストリア=ハンガリー帝国としての体制を築きつつあった時代。
当時のそうした社会的な状況も、シュトラウスの音楽には無視できない。
『戦争は愚かしい、人間の結びつきが大事だ』と最後に高らかに歌い上げられるメッセージは、当時の世相を反映したものだったろう。
それにもかかわらず、数十年後にこのオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子暗殺が火口となって、第一次大戦が世界中に広がってゆく。

登場人物の言葉は、すべて日本語。筋が追いやすくて助かるのだけれど、言葉がところどころ聞き取りにくい。主役の声が細いのも気になる。どう舞台をあじわったらいいのかわからないうちに、第一幕は過ぎてしまう。
第二幕は、バリンカイとジプシー娘が恋の二重唱を熱唱。シュトラウスらしい甘い旋律に、ぐいっと舞台に引き込まれる。幸せな時もつかの間、戦争が始まり、すべての男たちが戦争に行くと、間髪をいれずに第三幕。
舞台はウィーンの宮殿を思わせる建物。原色のスポットライトを浴びて第二幕の男たちが凱旋すると、客席からは思わず笑い声があがる。しかしそれは、とても好意的な笑い声。
どこか「オペラらしくない」雰囲気だけど、笑いの中に楽しい時間を共有しているという共感が生まれている。

負傷したバリンカイが、車椅子にのって現れる。
最初声が細いのではないか・・・と感じたバリンカイ役だが、はまり役なことに気がつく。
戦争で活躍して負傷し、英雄として現れるなど、「出来すぎ」で鼻につきかねない役どころを、いやみなく演じていている。
フィナーレは、バリンカイとジプシー娘の出会いとともにおきた奇跡への驚きの叫びとともに、幕がおろされる。
その後、登場人物たちは再び姿を見せ、ウィンナワルツの合唱で閉じる。
幕切れの洒脱さはさすが。

カーテンコールにも拍手は鳴りやまなかった。
オーディションを受けた多くの人が集まってつくった舞台。
初めて顔をあわせる人々がまとまって一つの共感を作り上げるのは、きっと大変な作業だったろうな、と思う。
だから、この舞台を作り上げたすべての人たちに、拍手です。
(三)

《公演の紹介》
びわ湖ホールがこれまでの「県民オペラ」を発展させ、2年に一度上演する新シリーズ、『びわ湖の夏・オペラ ビエンナーレ』の第一回。昨年の12月よりオーディションを行い、全国より出演者を募集して実現した。

●あらすじ
ヨーロッパのある国のことである。長くトルコ帝国に支配された後、24年前の戦争でオーストリア帝国の領地となるも、国土は戦争で見るかげもなく荒廃し、多くの人々が国を捨て、難民となった。しかし、ここに一握りのジプシーと、農民たちが土地を捨てずに踏みとどまっている村があった。そこへ、戦争で追放され客死したかつての村の領主の遺児バリンカイがたくましく成長して帰って来る。若い領主の帰還にジプシーたちは歓喜に沸き返るが、この村の土地の所有権を主張する豚飼いのシュパンはバリンカイの行く手を阻もうとする。
バリンカイと運命の恋におちるジプシー娘のザッフィ、帝国から派遣されたカルネロ伯爵、土地の青年オットカールと、彼との秘密の恋に悩むシュパンの一人娘アルゼーナ、彼らを巻き込んで、物語は大きく動き始める。そして、この土地と娘ザッフィをひたすらに守りつづける謎のジプシー女、ツィプラ。彼女の胸に秘められた秘密とは? バリンカイの運命は? ザッフィとの恋の行方は?
『宝の三重唱』、ザッフィの歌う『ジプシーの歌』など、おなじみの曲満載で、ワルツ王らしい優雅な旋律や華やかな合唱に彩られた、シュトラウスII世畢生のロマンティックオペラの最高傑作。

●曲目
ヨハン・シュトラウス二世作曲:『ジプシー男爵』
原作:M.ヨーカイ
台本:I.シュニッツァー


●演奏
指揮:佐藤功太郎
東京芸術大学で渡邊暁雄氏に師事。その後レオン・バルザン、レナード・バーンスタイン、ヘルベルト・フォン・カラヤンをはじめとする指揮者の下でさらに研鑽を積んだ。現在までに、1974年1975年東京都交響楽団指揮者、1978年1980年群馬交響楽団常任指揮者、1980年1983年京都市交響楽団指揮者、1982年1987年新星日本交響楽団首席指揮者、1990年1994年神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者、1996年2000年同団首席客演指揮者を歴任している。日本の主要オーケストラと活発にコンサートを行っていると同時に海外での客演も行っており、そのレパートリーはバッハの宗教曲から現代の作品まで多岐にわたっている。オペラに造詣が深く、1972年に二期会公演「ラ・ボエーム」でデビューして以来、現在までの総公演回数は500を越えている。東京芸術大学指揮科教授。

演出:岩田達宗
神戸市出身。東京外国語大学卒業後、劇団「第三舞台」を経て、舞台監督集団「ザ・スタッフ」に参加。1991年より栗山昌良氏に師事。1996年湘南台市民シアター「霊媒」にて演出家デビュー。その年の五島記念文化賞オペラ新人賞を受賞。1998年より2年間ヨーロッパ各地を遊学、2000年帰国。主な演出作品に、日生劇場「泣いた赤鬼」「カルメン」。びわ湖ホール「マルターリッチモンドの市場一」。日本オペラ協会「ギジムナー時を翔ける」。新国立劇場小劇場「オルフェオとエウリディーチェ」。コレギウム・ムジクム「奥様は女中!?」「笠地蔵」「愛の妙薬」。ザ・カレッジ・オペラハウス「フィガロの結婚」。藤沢市民オペラ「地蔵のオルフェ」。堺シティオペラで演出したプッチーニ作曲「三部作」は2003年度の音楽クリティッククラブ賞と大阪舞台芸術賞を受賞した。

訳詞:中山悌一
上演台本:岩田達宗
監修:若杉 弘(びわ湖ホール芸術監督)
指揮:佐藤功太郎
管弦楽:大阪センチュリー交響楽団
合唱: びわ湖の夏・オペラ ビエンナーレ合唱団
ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団
合唱指揮:清水史広
装置:増田寿子
衣裳:半田悦子
照明:柏木法人((財)びわ湖ホール)
音響:小野隆浩((財)びわ湖ホール)
舞台監督:佐藤公紀
舞台制作:牧野 優((財)びわ湖ホール)

●関連リンク
滋賀県立芸術劇所 びわ湖ホール

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