楽器にとって理想的な空間
ウィーンやイタリアでピアノ技術を研鑽され、♪音♪にこだわるピアノ調律師上野泰永さん。ご自宅に伺うと、そこは100人収容できる音楽ホール『スティマー・ザール』でした。楽器にとって理想的な空間を作りたいという思いで、ピアノの実験場を兼ねた音楽ホールを16年前に作られたそうです。
あくまでもシンプルに、『いい響き』を作るために素材や形をこだわった空間で聞かせていただいたピアノの音はとてもここち好い、いい響きで感激しました。
イメージと感性がいい音色を生む
「いい音色を出すためには良い空間と良い楽器だけでなく、イメージと感性をもって音を表現する事が一番大切です」と語る上野さん。ピアノ教室に通ってくる子どもたちを見ていると、とても素直に音をとらえているなあといつも感心するそうです。
また上野さんは、著名な作曲家の豊かなイメージと感性にいつも刺激を受けるとおっしゃいます。「初年度からこのホールで嵐野英彦先生(全日本ピアノ指導者協会理事・作曲家)指導のもと、レッスン
とレクチャーを年6回開いていますが、先生の話しを聞いていると違った角度からたくさんのことを学び取れることがあります。まだ若干名受講できるようなのでピアノ指導者の方々に参加していただきたいですね」。
いい音色のためにピアノを浮かせる
ふと床に目をやると、ピアノの脚の下に何かあります。「実はこのピアノ、床から浮いているのですよ」と笑顔の上野さん。よく見るとピアノのキャスターがπの字のような形の器具の上に乗っていて、床との間に少し空間ができています。これは上野さんが開発した『
Stimmfuture(スティムフューチァー)』というインシュレーター(防振材)。
ピアノが床に与える振動を減らすことで、床の材料や構造、床材の温・湿度変化による振動を防ぎ、ピアノ本来の音を引き出してくれるのだそうです。トライアングルを紐で吊るして鳴らすのと、床に置いて鳴らす音ほど違うとのこと。昨年からヤマハ音楽振興会グループの(株)常盤より販売。音が良くなったと全国で反響をよんでいるのだそうです。長年、形や材質に改良を重ね、国内外の特許を取得し、耐震実験も行ってきた上野さんの努力が報われた瞬間でした。
「僕の最終的な目標は今までにない構造で、より多様な音の出せるピアノを作ることなのですよ」といきいきした表情で夢を語る上野さん。♪音♪にかける情熱はかなりのもの。夢は必ずかなえられそうですね!
(取材 鋒山)
|