心のページ
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このページは市民から人格者と認められ、思想的に偏らない方に事務局からボランティアをお願いし、悩みの多い青少年や市民にメッセージを送っていただくコーナーです。
坂井孝之さんプロフィール

昭和21年東京生まれ。
2歳の時、病気で失明。3歳より横浜訓盲学院で学ぶ。
高校2年生の時フルートと出会い、新井力夫氏に師事。
1970年第20回全国盲学生音楽コンクールにて優勝。
フルートのほか、リコーダー、オカリーナ、ケーナ、篠笛(しのぶえ)などを演奏。
「笛吹きおじさん」を自称。
現在、マッサージ、はり業のかたわら、各地で演奏活動を行っている。
2004年NHK教育TV「きらっと生きる」に出演。



今週(2月12日号)、毎日新聞の情報紙
「Oh!Me」に掲載された心のページ

2004.2.12

秘 書

自分のことは自分でする習慣は訓盲学院で身につけた。そればかりか同じ部屋の小さな子を風呂に入れたりもした。しかし、目の見える小百合ちゃん(妻)と結婚して、掃除洗濯はもちろんのこと、街中を一人で歩くことも無くなった。

しかし、私の目の代わりを30年もしてくれた彼女の目は、今や老眼となってしまった。

ところが一年半ほど前、彼女以外に四六時中、読み書きを手伝ってくれるヒト?が現れた・・・我が家にパソコンがやってきたのだ。

高知システム開発の「PCトーカー」なるソフトを入れると、「読み子ちゃん」が画面を読んでくれるのだ。単調で事務的ではあるが、この「読み子ちゃん」がスゴイ。漢字の変換など、勉強すればするほど知りたいことが増え、「読み子ちゃん」を酷使してしまう。文書の作成やメールはもちろんのこと、インターネットで音楽情報を調べることも出来るようになった。もちろん、この原稿も自分で書いてメール送信している。

笛を吹くか、仕事をするかの単純明快な私の生活はパソコンが来て複雑な迷路に迷い込んでしまった感じだ。

「小百合ちゃん」も「読み子ちゃん」も、私にとってはかけがえのない秘書だが、「読み子ちゃん」のお蔭で今まで入ったことの無い「見える世界?」に足を踏み入れた気分だ。

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