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掲載日: 2011.03.2

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人形師 東之湖さん

東近江市で開催中の「商家に伝わるひな人形めぐり」の会場では、全国でも珍しい、近江特産の麻布を使った創作ひな人形「清湖雛」が来場者を魅了している。五個荘に工房を構える人形師・東之湖(本名・布施和信)さんの作品だ。

「剛」の麻から「柔」の表情

「近江の麻」は、糸が太く曲げにくいため柔らかさの表現が苦手だが、東之湖さんの手にかかると、「優しさがあふれている」と評判の穏やかで柔らかな風情の人形に生まれ変わる。「ひねり」という高度な技法を使って柔らかな動きを出している。
麻布で作る雛人形は全国でも珍しい。04年、東之湖さんによって生み出された。
「湖東地域に伝わる近江の麻に出合い、びわ湖をイメージしたおひな様を作ろうと考えました」
試行錯誤すること10カ月。最初に作ったのは、琵琶湖を連想させる青い衣装をまとった女雛「聖水の舞」だった。
たくさんの人に見てもらうため東近江市へ寄贈して近江商人屋敷で展示したところ、リピーターが生まれるほどの大評判。滋賀をイメージした「清湖雛」の名でシリーズ化し、06年に男雛を制作。以降、野山をイメージした緑の衣装をまとった「六人官女」、桜をイメージした淡いピンクの「十人囃子」、びわ湖の東西南北を囲む守り神……と、毎年数体の人形の寄贈を続けている。今年は「無垢の女神」。純白の麻の十二単をまとっている。
「名前には、暗くなりがちな時代だからこそ明るい未来へ純粋、清楚な気持ちで進んでほしいとの思いを込めました」

すべてを手作り

修業中は伝統的な技の習得に加え、平安時代の色遣いやしきたりを研究した。平安時代は、季節や位を多彩な色で表現していた。そうした知識を基に創作ひな人形にも挑戦、02年に独立して祖父の故郷・五個荘に工房を構えた。
人形づくりは、胴体から衣装の裁断・縫製、顔つけまですべて手作業。本物同様に縫製した着物を着付け、くぎで留めていく。
「一番難しいのは全体のバランスをそろえることです。少し角度が違うだけで雰囲気ががらっと変わってしまいますから」
オーダーメードでオリジナルのひな人形も作る。県から依頼を受け、ブラジルや中国への記念品として作った人形は、現地で披露した瞬間に歓声が上がった。

家族の笑顔に喜び

人形は単なる物品ではない。心を表現、心で楽しんでもらうものだ。それだけに、買ってくれる人との心の交流も、人形作りの手応えの一つだ。
「納品に行くと家族そろって出迎えていただけます。そこで見られる家族の平和な姿が喜びですね。飾りつけていると今まで泣いていた赤ちゃんが泣き止むこともありました。おひな様が家族の笑顔につながったとき、この仕事のやりがいを強く感じます。納品先のご家族とは修理などで何年ものお付き合い。これまたうれしいことです」

(取材・福本)

 

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