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掲載日: 2013.06.19

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服部 三知男さん(大津市在住・83歳)

クワガタ、カエル、蝶、金魚、水草……20㌢×30㌢の小さな板の上に作り出された自然界の情景……この全てが竹細工だ。
精緻で美しい作品を作り出しているのは服部三知男(はっとりみちお)さん。竹細工は中学校教諭を定年退職してから趣味で始めたという。

一本の作品に魅せられ

服部さんは中学校で美術の教師をしていたが、定年してからはこれという趣味もなく、のんびりと過ごしていた。
そんな服部さんの人生を一本の竹細工が変えることになった。
友人からもらった竹細工の風車を眺めているうちに「どんな手順で作っているのだろう?……どんな具合に?」と次々と疑問が湧き、いっそのこと製作にチャレンジしてみようと考えた。竹細工については技術も経験も無かった。
「曲げにくい竹をどうすれば形にすることができるのか?悩んで試行錯誤を繰り返すうちに、不思議なことにますます夢中になっていきました」
「一本の風車の竹細工」が火種となり、好奇心の炎は次々と燃え広がった。竹人形の展示館である福井県の「越前竹人形の里」などにも足を伸ばした。
いざ出かけてみると人形だけではなくさまざまなものが竹で作られている。特にスイセンの花には感動した。
「花が作れるのだから、昆虫も作れるはず」。服部さんのイメージはさらに大きく膨らんでいった。

労作を次々と出品

試行錯誤を経て何とか「昆虫と花」と題する竹細工を作り上げた。これを2008年の滋賀県退職教職員の展覧会に出品。
すると、NHKのニュース番組に取り上げられ、大きな話題になった。
翌年には「水槽の中にゆらゆら泳ぐ金魚」を出品。ろうそくの火の熱を加えながら少しずつ竹を曲げ、金魚のしっぽを作った労作だった。
以後、かごに入った秋の花をイメージした「秋のひだまり」、アジサイとカタツムリの「梅雨」、水面に浮かぶハスの葉に乗るカエルが可愛い「池のほとり」と傑作を作り続けている。

高齢者に希望を

水槽の中にゆらゆら泳ぐ金魚

高齢者に関する話題は一般的に「定年→老後→年金→介護……」と展開していきがちだ。
服部さんのように定年してから始めた趣味が花開き評判になることは多くない。1人の趣味にとどまらず、多くの高齢者の生き方に服部さんの作品は希望を与えている。

田舎暮らしをモチーフに

細部に使う竹は、自宅近くに自生する篠竹(しのだけ)だが、大半は土山町の実家のやぶから採取してきた真竹(まだけ)である。いずれも加工は簡単ではなく、カッターや彫刻刀を駆使する細かな作業だ。
特に、真っ直ぐな竹を加工して曲面を作るのは一苦労で、竹を薄く削り、爪で丸みをつけていくなどさまざまな技法があるという。作品のモチーフは田舎育ちの経験からのものが多く、「花摘み」「昆虫採集」など懐かしい記憶をたぐり寄せながら進めていく。
「製作には手間がかかりますので、今のところ年に一つ仕上げるのがやっと。でも、手先を動かすことは、健康にも良いですよ。83歳になりますが、この通り健康です。作品発表の場があるのも幸せです」
(取材・鋒山)

 

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