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掲載日: 2009.05.13

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成子紙工房 代表取締役 成子哲郎さん(61歳)

大津市桐生の里で黙々と「近江雁皮紙」を漉き続ける和紙職人の成子哲郎さんが今回の素敵な人。
日本の伝統を今に伝える成子さんに工房でお話を伺った。

繊細で強い「雁皮紙」

雁皮紙とは、ジンチョウゲ科の雑木「雁皮」を原料とした和紙で、繊維が細いので繊細で優美な紙に仕上がる。
「雁皮紙は細い文字でもにじまないのが特徴で、日本文化を支えるかな文字に適した紙です」と成子さん。
虫害に強く、耐久性が高いため、長期保存に優れている。
絵巻物や歌集、経典など貴重な書物に平安時代から使われてきた。

伝統を継承する唯一の工房

雁皮が多数自生し、清らかな水に恵まれた桐生の里では江戸時代末期より紙漉きが盛んで、近江雁皮紙が継承されてきた。
この紙は「流し漉き」という高度な技術を必要とし、水槽に原料と水を入れて何度もくみ流しながら漉いていく。
手に伝わる感覚だけで、同じ厚さに紙を漉いていくのはまさしく職人技であるが、現在、雁皮紙を漉く技術を持つ工房は、地域では成子紙工房だけになった。

若手の育成にも力を注ぐ

現在、残念ながら和紙の業界は今一つ活気がないが、成子さんは「これからは大量消費から本物志向へと時代が移り、和紙の素晴らしさが見直されるはずです。伝統産業の灯を消さないためにも、若手の人材育成が欠かせません」と期待する。
やる気のある人には技術を継承していきたいと熱く語った。
現在、工房では3人の若者が修業中で、その一人、谷宗幸さんは、和紙業界の後継者不足という新聞記事を目にしてこの世界に飛び込んだ。
「自分のさじ加減で美しい紙ができあがることに感動しました」と話す。

和紙の魅力を伝えたい

成子さんは人材育成と同時に、各方面に和紙の魅力を伝える努力を惜しまない。04(平成16)年にはNPO法人「日本手すき和紙連合会」を設立。活動の一環として、小学6年生が自分たちの卒業証書を手漉きで作る体験学習を指導している。
「子どもたちがものづくりの楽しさを知り、少しでも和紙に興味を持ってくれればうれしい」
と成子さん。
半世紀経っても色あせない卒業証書は、子どもたちとって、色あせない思い出となるに違いない。06(平成18)年には「全国手すき和紙連合会」の会長に就任。和紙業界の明るい未来のために、今後のさらなる活躍に声援を送りたい。(取材・福本)

 

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